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劇団四季「昭和三部作」(李香蘭・異国の丘・南十字星)名古屋公演 [芝居見物記]

 今、新名古屋ミュージカル劇場で劇団四季の昭和三部作(「李香蘭」「異国の丘」「南十字星」)の連続上演をやっています。
 これらは、劇団四季の浅利慶太氏が自分の経験した大東亜戦争を、事の善悪は別にかつて自分たちが経験した事実として、今の若者たちや、それに続く子どもたちに伝えなければならないという強い思いによって制作されたもので、いろいろな場で次のように語られています。

「三作を創るに当って念頭に置いたのは、終結から六十年を経た今、戦争の深い傷が、日本の社会から忘れ去られようとしていることである。特に戦後生まれの若い年代には、最も重要な「日本の歴史」のこの部分を知らない人が多い。戦争を、左側は「侵略」として東京裁判史観に基づき、全てを悪と片付ける。右側は「止むに止まれぬ歴史の流れ」と発想する。しかし問題は、愚かさと狂気に捉えられたその「戦争の実相」である。多くの人は「戦争」を遠い過去のものと考えている。本当にそうなのか。」

「あの悲劇を語り継ぐ責任が我々にはあると思う。戦争で死んでいった圧倒的な数の兵たち、戦後無辜の罪に問われ死を迎えざるを得なかった軍人たち、一発の原子爆弾、一夜の無差別空襲で命を奪われた数えきれぬ市民たちは、みな我々の兄姉、父母の世代である。今日我々を包みこむ「平和」は、あの人たちの悲しみの果てに齎(もたら)された。」

「哀悼と挽歌は、我々の手で奏でなければならない。」

 戦争の是非についてはここで議論はしませんが、大東亜戦争は自分の父母、そして祖父母が経験した事実として、もっと身近に感じ、自分自身が等身大の姿を子どもたちにも語り伝えなければならないことで有るように思われてなりません。

語り継ぐ日本の歴史:浅利慶太-劇団四季HP
http://www.shiki.gr.jp/applause/ikoku/rekishi.html

 さて、すでに観た「ミュージカル李香蘭」と「ミュージカル異国の丘」の劇評です。


『ミュージカル李香蘭』感想
 物語のおもしろさや、音楽の良さを語る以前に、とにかく重たい芝居でした。
(異国の丘も重いのですが、もっと直接的に感情に訴えて来て何度でも観たいと思えましたが(前回の名古屋公演の感想)、李香蘭はちょっとしんどい重さでした。)

 思うに、浅利慶太さんの感情の部分がほとばしり出て、「これも伝えたい」「あれも知っておいてもらいたい」との思いが勝ってしまい、ミュージカルという情感をよく伝えられる手法との間で空回りして、理屈っぽいミュージカルが出来てしまったような感じがしました。
(「異国の丘」「南十字星」と制作年度が進むに従い、抑制の効いた良いミュージカルになってきているのかな?)

 また、李香蘭を観る前に自分なりに満州について知っておこうと、事前に満州がらみの本を数冊読んで勉強して臨んでいたのですが、観劇前に作っておいた自分なりの歴史観とのギャップが、自分にとって理屈の上でこのミュージカルを受け止めてしまった一因であったのかもしれません。
(満州について自分が考えたことは、いずれまた書きたいと思います)

 個人的には、物語の流れとは関係なく一幕の終わり日米開戦「真珠湾攻撃」の下りでは、「嗚呼、これで日本が滅びてしまう」とほほを涙が伝ってしまいました。(一緒に観に行った鬼嫁に「何で、ここで....。」と白い目で見られてしまいました。)

参考:気になった部分
 日本は無条件降伏したとなっていましたが、事実はポツダム宣言の受託により日本軍が無条件で武装解除したのであり、日本本体はポツダム宣言の条項に従った条件付き敗北だったはずだ?とか(カイロ宣言までさかのぼって確認しなければならず、実は私はよくわかっていないかもしれません)
 日本敗戦後も国共の内戦が続いたわけで、日本敗戦で平和が訪れたという書き方はおかしいのではないか?とかです。
(日本を悪玉に中国を善玉に書きすぎている印象もありました....。:偏見かな??)

劇団四季-ミュージカル「李香蘭」HP
http://www.shiki.gr.jp/applause/rikoran/index.html
(満州を舞台に、満映のトップスター李香蘭を追った舞台です)


『ミュージカル異国の丘』感想
 数年前にこの芝居を観るまでは、シベリヤ抑留のような悲惨なことがあったということを感覚の上でほとんど気にとめていませんでした。
 戦争と言えば太平洋戦争、大陸での出来事は教科書で書かれていた程度の事実認識で、太平洋や東南アジアの洋上で行われたアメリカとの戦闘が”かつての戦争”だと思っていました。
 「李香蘭」もそうのですが、「異国の丘」を観て、その背景を知りたいと調べ、ようやく戦争の実相が自分なりに認識でき、「大東亜戦争」という言葉の意味が感覚的にもわかるようになり、この芝居に巡り会えて本当に良かったと思っています。

 さて観劇レポートです。
 名古屋での公演はここ5年間一通り見てきて「異国の丘」自体も3度目の観劇だったのですが、「良い芝居だったなー」と心より思える非常に良いできだったように思います。
(自分の中では「壁抜け男」に匹敵する、これまで観た中で3本の指に入る良い芝居でした)

 前回公演での、劇団四季の看板でもある「石丸幹二-保坂知寿」のオリジナル主役コンビが、今回は「下村尊則-木村花代」に変わっていて、石丸に比べて泥臭くオーバーアクション気味の下村の濃い演技が、序盤どう見ても貴公子には見えなかったのですが(戦国武者か山賊のボスのようでした?)、場が進むに従い回りの役者の感情表現がどんどん豊かになってゆき(下村に巻き込まれるかのように:勿論おさえられる演技は適度におさえられ)、改めて「人がやっている舞台」と言う事を感じることが出来ました。

 石丸幹二も「違いがわかる男はやっぱりちょっと違う(コーヒーのCMに出てたことがありました)」と感動した覚えがありますが、今回の下村尊則の方がより深いところに観客を呼び込むことが出来ていた様に感じました。(演出が変わってきたことによるものかもしれませんが)

 演出的にも、回を重ねた結果前回よりもさらにリニューアルが進み、一つの芝居としての完成度が遙かに高まっていました。
(一つ一つの出来事の奥行きが深くなり、登場人物の人間性が良く伝わるように流れを全般的に見直した形跡がありました)

 芝居に興味がない普通の男性が観て、舞台に吸い寄せられ感動できる芝居はあまり多くはないのですが、「異国の丘」は大の大人が初めて観に行っても何かを感じることが出来る芝居だと思います。
(子供連れや、年配者と若夫婦の組み合わせも思ったより多かったです)

 

 

PS.
 恥ずかしながら、目が潤んでしまいました。
 うちの鬼嫁的にも、「会期中にもう一度観に行きたい」と口にする、とても良い舞台だったようです。

 「良い芝居は、人生を豊かにする一服の清涼剤!」です。

劇団四季-ミュージカル「異国の丘」HP
http://www.shiki.gr.jp/applause/ikoku/index.html
(実在の人物である“近衛秀隆”(近衛元首相の長男:細川元首相の叔父)をモデルに、和平工作とシベリア抑留を扱ったミュージカルです)

 

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