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ミュージカル「南十字星」を見てきました。 [芝居見物記]

昨日、時折落ちる雨の中ミュージカル「南十字星」を観て参りました。

 「南十字星」は、一昨年の初演の際に東京で一度観ており(知る人ぞ知る"Nさん"&鬼嫁と3人で)、その時の感想は初演でもあり舞台自身のリファインが余り進んでおらずやや消化不良気味の舞台だとは感じましたが、「インドネシアテイストの独特な音楽&ダンス」そして「大東亜戦争を扱ったものとしては先に明かりも見える舞台設定(オランダの植民地であったものが、戦後独立を果たします)」に大きく可能性を感じました。

 前回の初演観劇から2年が過ぎ、物語としての洗練度が進んで「良い芝居」になっているで有ろう事を期待して昨日に望んだのですが、正直言って期待はずれでした。


 大きくは、B・C級戦犯裁判で誤解によって絞首刑を受ける主人公"保科"の運命と、日本が関与したことによって果たす"インドネシア独立"という"明るさ"の対比が物語の上でうまく噛み合っていないように感じました。

(最後がインドネシア・ラヤで独立を強く謳う設定は、そこにメッセージ性を持たせる意図があったはずなのに、それぞれがバラバラにそこにあるようにしか見えませんでした。:歴史をよく知らない人が見ると何故そこにインドネシア・ラヤが有るかすらわからないのでは....。)

 また、連合国の報復感情の帳尻を合わせるために誰かが犠牲にならねばならず、事実関係に基づかない裁判であろうともその運命を享受しようという崇高な考えと、主人公保科の個人としての恋愛感情とが同じレベルで並べられており、創作された物語としては余りうまくいっていないように思いました。

 初演の東京公演で感じた「可能性」も、今回の名古屋では物語のリファインを進めた結果一連の芝居の中に埋もれてしまい、物語としての整理が進んで多少わかりやすくなったのと引き替えに、伸ばさなければならない長所を削ぎ取ってしまったようで、本当に残念でした。
 
 
 ただ、戦後の戦犯裁判というものがいかにいい加減なものであったのか?と言う点と、大東亜戦争で日本はアジアの各国を自分の都合だけで一方的に侵略し悪逆非道の限りを尽くしてきたという史観は、日本がそこに行く前に西欧各国の植民地であり過酷な搾取が行われていたという単純な事実のみで崩壊するのだと言うことを伝える、良い教材ではあると思います。
(それと忘れてはいけないのが、戦前の日本人個々の公(おおやけ)に対する意識の素晴らしさ....。)
 
 
 少々辛口のコメントにはなりましたが、舞台の美しさ、インドネシアテイストの独特な音楽とダンスの素晴らしさについては、やはり四季の芝居であり一級品です。
 興味を持たれたら是非とも、観に行ってください。
 
 
 最後に、主人公"保科勲"の最後の台詞を紹介しておきます。

 「明日の日本の若者たちよ。戦争の中に生きた若者たちの言葉を聞いて欲しい。歴史の大きな転換期には、名もない無数の人々が犠牲になる。その小さな小さな死の積み重ねが世界の歴史を進めてきたことを、今、私は実感している。戦果を生き延びた命をここで失うのは悲しい。が、この無価値の価値を信じて、私は未来のために死んでゆく。日本の変革はおそらく劇的に進むだろう。その発展の物語が私の死後に始まり、成果を見届けられないのは残念だが・・・・・・たとえこの身は滅んでも、私の代わりに新たな役割を明日の若者たちに未来は託せると信じている。明日は君たちのものだ。五十年度、百年後の日本を、未来の若者たちよ、よろしくたのんだ!」
 
 
PS.
 これで「李香蘭」「異国の丘」「南十字星」と続いた昭和三部作連続上演は、終わりです。(個人的には「異国の丘」が一番良かった!!)
 次の「鹿鳴館」もやや重め(アカデミック)ですが、「夢から醒めた夢」以降はもっと軽やかな記事が書けるようになると思いますので、お楽しみに....。

 なお、私の一番大好きなミュージカル「壁抜け男」が東京で始まります。
 名古屋での再演があるのをとても楽しみに待つ今日この頃です!

劇団四季 ステージガイド 南十字星
http://www.shiki.gr.jp/applause/minami/index.html

山本大成 「かわら屋の雑記帳」劇団四季「昭和三部作」(李香蘭・異国の丘・南十字星)
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2006-06-17-1

 

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アキラ

大東亜戦争と書かれていることに、感慨を覚えます。
歴史観を正しく持っていらっしゃる事に感心も致しております。
今後も色んな事を教えて下さい。
期待しています。
by アキラ (2006-07-26 10:30) 

たいせい

アキラさんにそう言っていただけるのは、過分なほど光栄なことだと思います。
 私の場合はすべて耳学問で、アキラさんのように実際にその時を生きられ、幾多の経験を積み重ねられた方たちの足元にも及びません。
 私の方こそ、よろしくお願いいたします!

PS.
 シベリア抑留と対米和平を扱ったミュージカル『異国の丘』の浜松公演が、10月16日(月)に浜松であるようです。
 近衛元首相の長男で細川元首相の伯父”近衛文隆”をモデルにしたミュージカルで、非常にバランスの良い舞台で3度観に行っていますが何回観てもなにがしらの感動が伝わる、とても良い芝居です。
 興味がありましたら、アキラさんもいかがでしょうか....。

劇団四季「昭和三部作」(李香蘭・異国の丘・南十字星)名古屋公演
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2006-06-17-1
(私の劇評です。「李香蘭」の後に「異国の丘」があります)

ステージガイド 異国の丘 - 劇団四季HP
http://www.shiki.gr.jp/applause/ikoku/index.html


 
by たいせい (2006-07-26 12:27) 

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