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屋根工事業の後継者 [屋根には「瓦」]

 BLOGの更新遅れ気味で面目有りません。
 先々週の出張の余波で、パソコンの前になかなか座ることが出来ずにいました。

 さて、愛知県は日本の瓦の6割を生産している巨大産地なのですが、その愛知に『愛知県瓦高等職業訓練校』(以下、屋根学校と書きます)という高等職業訓練校があります。

 ここは、屋根工事職人を養成する場で、全国の屋根工事業者の主に2代目・3代目が、愛知県の屋根工事業者のもとで実務経験を積みながら、週の半分通い、技能を学ぶための学校です。


愛知県瓦高等職業訓練校
http://www15.ocn.ne.jp/~kawara/

 8月の終わりに東北のある地方へ出張していて、職人さんから相談を受けたのは、長男が来年の3月に高校を卒業するので屋根学校に入れたいから、よろしく案配して欲しいという物でした。


 その職人さんと息子さんと会い食事をしながら話しをしていると、息子さんも「前向」きで、父親から「屋根工事業をやれ!」といわれて嫌々ながら志望をするのではなく、自分から望んで「父親の職業を選ぶ」のだと言うことが伝わってきました。

 それがわかり、私も嬉しい気持ちで胸がいっぱいになりました。
 
 
 建築に関わる職人仕事のほとんどは、いわゆる3Kの最たる物の汚れ仕事で、今の子供たちが望む「安定」「きれい」「楽な仕事」の対極にあります。
 それを、常日頃父親の姿を通して目の当たりにしながら、自分の意志で「父の仕事」を引き継ぐ決心をして、人生の大きな分岐点でその道を選ぶ。
 本当に素晴らしいことだと思いました。

 おそらくは、屋根工事という職人仕事に真摯に取り組む『父親の後ろ姿』がそこにはあったのでしょう!
(もちろん、それを真っ直ぐ受け止めることの出来る、息子さんの素直な心と....。)
 
 
 そしてもう一つ、息子さんにその道を薦めることができるという、職人さん自身の姿に実に胸打たれる物がありました。

 弊社でも、全国に数百軒のお客様があるわけですが、ここのところ「こんな辛くて儲からない仕事は自分一代だけで十分、子供にはやらせたくはない!」との話が大勢で、自分の仕事を子供に勧められる人なんて、ほんの一握りしか有りません。

 それを、自分の息子に薦められるということは、自分の仕事に『自信』と『誇り』がなければ到底出来ることではありません。
 
 
 嬉しかったと同時に、
「子供に選んでもらえる『自分の背中』が、果たして自分にあるのか?」
「自分の子供に職業として薦められる『自分の仕事』を、残すことができるのか?」
 そんなことを考えさせられた東北出張でした....。


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アキラ

私が普段付き合っている、各職の職人さん達は、「オレの代で終わり」と言っています。殆どがサラリーマンになるようです。
オヤジの仕事に、魅力がないのでしょう。
それを考えると、文中の「親子」は素晴らしいですね。
たいせいさんもお子さんが大きくなったときに、跡を継いでくれるようになられると思いますよ。
by アキラ (2006-09-06 18:25) 

女性は言葉で人生を教え、男は背中で人生を語る。。。
言うは易し、行なうは難し。
でも、父親で、男ですから。逃げるわけにはいきませんね。
背中を見せて逃げてはならぬ。語らねば。そう思い、悩む日々です。
by (2006-09-06 22:04) 

たいせい

アキラさん、nice!ありがとうございます!

 建築関係の職人の後継者難、本当に、目を覆いたくなるものがあります。

 自分のした仕事に責任を持った「顔の見える大工さん・職人さん」の世界が壊れ、広域化したハウスメーカー主体の価格優先でマニュアル化された「顔の見えない作業者」の世界が蔓延し、結果として起こる「競争原理による手間の価格崩壊」がもたらした物のような気がしています。
 今の施工単価では若い職人の養成も出来ず、事業としてのメリットもなくなってしまい、技能に下支えされた「職能人としての職人」を育てることが出来なくなっているのではないでしょうか?
(弊社は和瓦というセグメントで商売をしていることもあり、養成に時間のかかる和瓦職人の高齢化や後継者難による廃業が本当に深刻です。)

 ほとんどのハウスメーカーは、かつてそれなりの施工単価でこそ成り立ってきた「職人養成システム」に依って一人前に育った職人をやすい手間で使い捨てにして、新しい職人を育てなければならない事を忘れているような気がしてなりません。
(工場での製造、マニュアルによる職人の作業者化が進めば有利と考えた確信犯なのかもしれませんが....。)

 ここのところ、職人気質でこだわりの施工を薦められている方のほうが、仕事が切れずそれなりの施工単価で成り立ち、後継者にも悩まされることがないという事例に幾つか出会うことが出来ましたので、余力が出来たらそんな話も書いてみたいと思います。

 何か、愚痴愚痴した話になってしまいました。 
 まだまだ修行が足りず、『何かを伝えられる背中』には、まだまだほど遠いと反省しきりの昨今です。

 本文中の親子と会って、一筋の光明を見る思いがして思わず綴った文章にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
by たいせい (2006-09-07 10:59) 

たいせい

 STEALTHさん、いつも訪問いただき、そしてnice!&コメント本当にありがとうございます。

 なかなか、「達観」も「開き直り」も出来ず、もちろん悟りの境地にはほど遠く、日常起こる有象無象に、みっともなくも身悶えしながら「のたうち回っている」昨今です。

 なんとか自分の子供にだけは、「くだらぬ見栄」と「取るに足らない意地」と「渾身のやせ我慢」で頑張っていこうではありませんか!

       男ですから.....。
by たいせい (2006-09-07 16:12) 

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