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瓦研究会(和瓦の振興·全陶連:全国陶器瓦工業組合連合会·ウォーキングトレイル「鬼みち」·産業観光) [屋根には「瓦」]

 先日、瓦製造の全国組織「全国陶器瓦工業組合連合会」加盟各社のうち、若手有志が集まった「瓦研究会」の会議が、愛知県にて行われました。

 この会の目的は、「都市部を中心に屋根材としての瓦の採用が減ったのを憂い、瓦振興の具体的な方策を探る」というもので、今回で4回の会議を重ねています。

 岡崎市内の民家の屋根(美しいと思うのですが...)


 これまでの会議では、瓦についての現状認識として以下のような意見が出ました。

  1.  一般のお施主様は、屋根材の違いを全く知らない(自分の家に何が葺かれているかすら知らないケースが大半)
  2.  ハウスメーカーが持ってきた屋根材なら信頼できるとの認識で、お施主様はその中から選ぶのみ
  3.  瓦が重くて地震に弱いとの間違った印象の蔓延
  4.  和瓦は古くさいとのイメージ
  5.  業界の中では瓦の良さを共通認識として持っているが、お施主様のほとんどにはその認識はない
  6.  業界としてのPRは総花的で、何の役にも立っていない
  7.  和モダンが流行とか、和への回帰とか言われているが、内装の話ばかりで外装には関心が向かない

 我が家の近所の建物(和瓦です)


 私は本質的に、住宅を建てるお施主様の関心が内装や設備機器に向いていて外装材である屋根にほとんど関心が向いていないことが、もっとも大きな問題だと考えています。

 実際に業界外の私の友人に聞いてみても、自分の住んでいる家がどんな屋根材で葺かれているかを知っていたのはわずか2人だけで、その二人とも実家が大工さんだったというのが現状でした。

 一般のお施主様はその程度の関心なので、ハウスメーカーが薦める屋根材であればどれも同様に信頼できるものだとの意識で、お金をかけるのであれば設備機器や内装にお金をかけたいとの意識が働き、結果としてますます瓦が使われない建物が増えています。

 ただ現実には、ハウスメーカーの家と言えども選ぶ屋根材によっては、結露による野地板の腐朽などによって家本体の寿命を縮めてしまっている事例なども山ほど有り、家本体を風雪から守るという基本性能を十分に持たない屋根材が実際には薦められているのが現状です。
(屋根面の断熱や結露対策がしっかり考えられた施工でないと、金属屋根や薄い屋根材は非常に危険です)

 結局、どれだけ内装や設備機器にこだわろうとも、基礎や構造を含む家本体の寿命が短くなる屋根材を選んでいたのでは何をやっているのかよく解らず、「家本体の寿命を延ばし、家本体を守る屋根材を選ばなくてはならない」との認識を一般のお施主様に広く持っていただく以外に、瓦の振興という面では道がないとに思っています。

    屋根材を選ぶのは、軽さではなく、30年以上家を持たせられるかどうか!!で....。
    
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-06-18

    夏涼しく、冬温かい「瓦屋根」(屋根材による夏季・冬期の熱環境
    
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-06-20

  これも和瓦

 また、「瓦屋根は地震に弱い」との間違った認識を払拭するのは勿論大切ですが、どれほど軽量化を進めようとも金属屋根や薄型の屋根材のような軽さにすることは不可能で、その意味でも屋根材に本来求められる性能のうちもっとも重視せねばならないのは「家本体を色の環境変化から守る」と言う点で、軽さなどと言う性能はそれに比べれば遙かに優先順位の低い性能であると言うことを示せばよいとも考えています。

    「瓦屋根は地震に弱い」は、正しくない!?(阪神大震災)
    http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-03-13

  山形県酒田市 山居倉庫の屋根(美しいと思うのですが...)


 

 

 そして、上記の現状に対する対策としては、以下のような意見が上がっています。

  1.  屋根に関するお施主様の関心の喚起(関心が高ければ、ハウスメーカーも自然に選択肢の一つとして加える)
  2.  瓦は地震に弱いとの間違ったイメージの払拭
  3.  業界人であれば常識として持っている和瓦の良さを、大学等との共同研究などによって証明する
  4.  屋根材としての要求性能の第1番目は、家を環境変化から数十年の単位で守ることだと言う意識の浸透
  5.  「えっ、これって和瓦!」と思っていただける、驚きのある物件写真の収集
  6.  和の良さを感じられる物件写真の収集
  7.  他の屋根材での、地震・台風・野地板の腐朽などの被害事例写真の収集
  8.  「流行は和瓦にある!」というイメージを与えるPR戦略
  9.  様々な役瓦を使うことに依る、和瓦の装いの多様性についての認知を広げる
  10.  総花的な広告方法を改め、予算やマンパワーの一点突破を目標とした集中的使用
  11.  みのもんたの起用(わたし的には上戸彩か、うちの娘??

 

 これも和瓦です


 瓦研究会として何回かの会議を経て、「業界内のPRを主眼として考えるのではなく、一般へのPRを主体とする」「瓦としての認知の進んでいる和瓦を前面に出して、瓦全体の牽引役とする」の二点についてはコンセンサスが出来つつあります。

 一番の課題は、瓦業界内では常識として持っている「瓦の良さ」を、どうすれば「一般の方達の認識にまで広げられるか?」と言う一事に尽きると考えていますが、何かご意見がありましたらよろしくお願いいたします

 

 「一粒の麹、業界を変えられるか!?」と言ったところです。

 

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PS.
 私の地元での瓦研究会の後、せっかく他産地から三州にまで集まっていただいた他産地の方達に対して、三州瓦メーカーの工場見学2社と、高浜市内の「鬼みち」の案内をしました。

 

 高浜市内のウォーキングトレイル(散歩道)で、愛知県の産業観光として時々TBV党でも紹介されている(ローカルですが)「鬼みち」の写真を、何点か紹介します。

9982186.jpg 陶器製の巨大観音像(観音寺)

9982189.jpg 9982192.jpg 塩焼きの巴蓋・塩焼き窯の内部

9982193.jpg 9982194.jpg 9982256.jpg

9982257.jpg 9982259.jpg 9982261.jpg
 蓮乗院の屋根の上に乗っている竜宮城(天女・乙姫・亀・など)

9982183.jpg 大山公園の遊歩道に使われている瓦

    鬼みちものがたり-鬼みち山内人の会HP
    http://onimichi.fc2web.com/michi/top.html

    地元の神社の靖国神社遙拝所
    http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2006-06-24
    (記事の後の方で、鬼みちの写真を何点か紹介してあります)
 


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浜松自宅カフェ

瓦屋根の大屋根って本当、美しいです!
鋼板屋根は音がうるさいし、耐久性、耐火性では瓦屋根の比ではない
と思います。
瓦屋根を載せられる構造耐力の躯体を用意できれば、瓦に勝る無機系の
屋根材はないかも知れませんね。
by 浜松自宅カフェ (2007-10-30 00:18) 

toyo

仕事柄、お客様から瓦の葺き替えをしたいので、業者を紹介して、と頼まれることがあります。そんなとき私の同級生の瓦屋を紹介していますが、その同級生からもたいせい様の話とほぼ同じ内容を聞いていました。
あるとき最高級の瓦の施工写真を見せてもらったことがあります。ふつうの瓦の数倍の価格だそうですが半永久だと言っていました。たしかアルミ製瓦だったように記憶していますが、私は半永久であれば安いものだと思いました。
私見ですが、どうも最近の若い人は「耐久性」よりも「カッコよさ、デザイン性」重視の気がします。だって「日本の住宅は30年だけどアメリカは100年以上の寿命ですよ」と言っても「30年で充分。ダメになったらまた気に入ったデザインの家をつくればいい」なんて平気で言うんですから。車の買い替えと似たような感覚なんでしょうかね。とにかく「耐久性」には関心があまりないような気がします。この感覚、私にはよくわからないです。
by toyo (2007-10-30 08:55) 

たいせい

 浜松自宅カフェさん、この記事の冒頭で紹介した「岡崎市内の民家」ですが、実は「石原邸's Cafe」という文久二年(1862年)に建てられた建物を復元して「和」を感じていただくCafeとして営業されています。
石原邸's Cafe -
http://ishiharatei.net/
 妻の花の先生が、来月その会場を借り切って発表会のようなものをやる関係で、先日子供達を連れて下見に行ってきたのですが、とてもゆったりとした時間が流れる落ち着いた空間で、心が洗われました。(近日中に記事にしようと思っています)
 私個人の考えになるのかもしれませんが、和瓦を使った旧家はそんな安らぎとも言える空気を醸し出す空間であり、新しい家でも旧態依然の外装の一つとして使うのではなく、センスのある建築士の方達が現在の感覚で使うと、また新しい安らぎ空間を作ることが出来るように思います。
 お施主様にとっても、建築関係者にとっても、魅力的に思える「和瓦」。
 そんな世界を、作ってゆきたいものです....。

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-10-30 09:52) 

たいせい

 toyoさん、裏側にヒーターを取り付けたアルミダイキャストの融雪瓦が一事出回ったことがあり、それを見られたのでhないかと思いますが如何でしょうか?(ヒーターのないタイプもあった様に思います)
 「住宅の寿命は30年で十分」と言われる方がいらっしゃるのも事実。
 その方達にも瓦を使っていただきたくなるような仕掛けを考えねば成りません。(相手にせずに、本格的な建物にフォーカスを絞るというのも一つの考え方ではありますが)
 思うに、規格化された安っぽい家に慣れさせられ(回りの家や展示場などで)、「家は買うものではなく建てる物」という認識が無くなりつつあるのも要因の一つなのかもしれません。
(自分だけのOnly Oneとか言いつつも、周りを見ながら「この程度の自分でよい」と安心してしまっている風潮とどこか符合するような気がしています。)
 やはりホンモノは一目見れば分かりますので、ホンモノを少し筒でも人目に触れさせるところから始まるのかもしれません!?

 nice! &コメント、ありがとうございました!
 
by たいせい (2007-10-30 10:14) 

plusgate

瓦の良さはわかってるのに、なかなか採用にならないのは、
デザイン的な思考にも左右されていると感じてます。
外観の和モダンは名古屋ではもう少しかかるかなと感じており、
デザイン的にシンプルモダン+瓦があっていいと思うんですが、
それをデザインするのに苦労しております。
by plusgate (2007-10-30 15:34) 

たいせい

 plusgate さん、住宅雑誌などで見る限り「和モダン」というのは、間取りや内装で和の空間を演出することで、外装についてはそれほど気を遣われていないのが実情のように感じています。(内部空間の邪魔にならない程度の外装は当然ですが...。)
 ただ、斜線制限などが引き金になった片流れの傾斜屋根や、ロフトの使用などを視野に置いたそこそこ勾配のある屋根などを見る機会が少しずつ増え、屋根を「見せ場」として扱っていただける建物が多くなってきたようには感じています。(いずれも、外装における屋根の比率が高い家になります)

 伝統的な和のテイストへの回帰も一つのテーマではあるのですが、これらの建物が少しずつでも増えることによって、「和瓦=古くさい」というイメージを払拭して、新しい時代に即した「和瓦=安らぎの空間」と成るような雰囲気作りをしていかないと、私たちの業界は滅びてしまいそうです....。
(伝統を大切にし過ぎて、文化財とか人間国宝の世界になったら、産業としてはおしまいです)

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-10-30 16:54) 

アキラ

仰るとおり、「住宅を建てるお施主様の関心が内装や設備機器に向いていて、外装材である屋根にほとんど関心が向いていない」は事実です。
外壁のサイディングについては、しっかり勉強されていても、屋根に付いては殆どの方が不勉強です。
屋根に使われた『野地板』は、杉の荒板なら何十年経っていても再利用可能ですが、『ベニヤの野地板』は、15年程で取替が必要です。
重さがある和瓦を乗せるには、『ベニヤの野地板』は使うべきでなく、『野地板』から考えなければダメだと思っている一人です。
by アキラ (2007-10-30 17:11) 

たいせい

 アキラさん、むしろ軽い屋根材の方が結露による野地板の腐朽が多く(場合によっては垂木にまで腐朽が進んでいるケースも聞きます)、防湿層である接着層を持ったコンパネではなく、バラ板の使用が必要に感じています。
(もっとも断熱や小屋裏換気をよっぽどきちんと行わないと、同じ事が起こりそうですが...。)

 和瓦の振興について私個人としては、外装の意匠面もさることながら、屋根瓦の優れた性能を前面に出して、「機能建材としての瓦」という認識を一般に広げることが必要だと思っています。
 基礎や構造に注目が集まっている昨今でもありますので、「家本体を四季の気候変動から守るのが瓦」「住宅の三大要素は、基礎・構造・屋根」という事実を一般に伝える活動以外に方法がないような気がします。

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-10-31 09:57) 

瓦はとても魅力的な材料だと認識しています。少々玄人好みかもしれません。仕事柄、30年後もあるデザインとか構造とかとは何かと考えることがあります。住宅の場合は構造は木造。外装材は無塗装でも耐久性が確保できる金属かタイル、瓦、ガラス、木材。これらは姿が若干変わっても残っていくと思います。ただこれらの材料は長持ちすることが解っていますから、耐久性という面を考えずして、施工やコストといった問題を考えていけると思います。住宅の場合”何年も愛される美しい町並みを!”は何か説得力に欠けると思うので、”自分の子供や孫が大切に使って行こうと思えるもの!”といった価値観がよいのではないかと思っています。
by (2007-11-06 00:12) 

たいせい

 ヒゲボーズさん、仰るように瓦業界の中で景観材料としての瓦を前面に出して瓦の復興を模索する動きがここ数年来ありますが、あまり大きな成果を上げてはいません。
 結局、「和」の安らぎを求めはしてもそれは日常の生活空間としての要求ではなく、出かけた先での安らぎを求めていると言うことのようです。
 また、いわゆるこだわり住宅の中で、和風志向の方達が瓦離れをすることは、少なくとも当面はないと思っています。

 瓦自体は、平板瓦の普及などでここ十年で必ずしも減ってはいないのですが、和瓦の出荷量はは半分以下になり、量を増やした平板瓦も新生屋根材と価格的に闘った結果として量の確保に成功したのであって(一時の新生屋根材の広がりを留めた功績は明らかにありますが)、結果的に瓦価格と施工単価の下落をもたらしました。

 文化財級の建物のみに限った特殊用途か、和風志向のこだわり建築用の屋根材として瓦が無くなってしまうことはあり得ないと私も思いますが、一般物件の屋根に乗らなくなってしまったのでは、出荷量は半分以下になり、瓦業界としては(施工していただく職人も含め)壊滅的な打撃を受けてしまいます。(すでに受けつつあり、メーカー数は1/3以下に減っています。:大規模プラントの新設で、生産量は減っていないのがつらい...。)

 瓦業界内部や建築業界では、瓦の良さというのは広く認められていると考えているのですが、それを一般のお施主様の認識にできなければ、先がないと思われて仕方ありません。

 nice! &コメント、ありがとうございました。

PS.
 決して悲観的に見ているだけではないつもりです。
 基礎や構造については、本来地味な分野であるにかかわらず、お施主様に関心を持っていただくことに成功しています。
 家本体を、四季の気候変化から数十年単位で守る「瓦」という屋根材ですので、仕掛けの方法次第では一般の関心を集めることも不可能ではないと考えています。

 せめて、来年二月に生まれる三人目が成人するまでは、この業界で食わせてもらえるよう死にものぐるいで頑張らなければ....。
by たいせい (2007-11-06 08:53) 

katuyosi

我が家は築100年の小さな一般の民家ですが、この度土葺き瓦の引き直しを梅雨開けから行うことができそうです。
最近では、こうした修理を行う家は殆ど無く、またそれができる職人も少ないのが現状です。今回の修復の職人さん探しは、本当に苦労いたしました。

今回の仕事を見学したいような学生や学校、職人はいないか問い合わせ等もしていますが、業界の方でさえあまり返事が帰ってきません。

今回やると、25~30年は修理が必要でなくなるようです。
広島でもまだこれだけのことができる職人がいること、昔ながらの土葺きにこだわりたい施主がいること、こういった技術が絶えそうな危機にあることを知って欲しいと思います。

by katuyosi (2010-07-02 22:02) 

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