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業界紙へ寄稿「屋根の重要性の再認識こそが、粘土瓦そして和瓦の復興につながる」 [屋根には「瓦」]

 先日、業界紙の出版社である日本屋根経済新聞社から季刊誌「ROOF & ROOFING」(以下 R&R)の記事の依頼がありました。

 内容は「和瓦の復権」について書けとのことで、分不相応とは思いつつも気軽に引き受けてしまい悪戦苦闘するの羽目となってしまいました。

 文字数が当初の依頼よりかなり多くなったこともあり雑誌の方ではかなり圧縮される見込みなのと、屋根業界ではこのBLOGはさほど知られていませんので、全文を紹介させていただきます。(○田さん、ゴメンナサイ)

(たいした物は書けないのでお恥ずかしい限りです。)


 

「屋根の重要性の再認識こそが、粘土瓦そして和瓦の復興につながる」

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 岡崎市-石原邸の瓦屋根
(和瓦が家も守っています:厳しい気象から家を守るのが屋根材に要求される性能)


建物と屋根「竪穴式住居には屋根しかない」

 先日ネットを見ていて、「建築の原型は屋根である!」との設計士の方が書かれた記事を発見しました。
 竪穴式住居など遙か古代に人間定住する住居が造られた際、基礎も構造も壁もなく雨風の気象変化から中に居住する人を守る為の「屋根」しか存在していなかった。その後、より快適な住居が求められるようになって初めて屋根の位置を上に上げるために柱が生まれ、壁がつき、それらを支えるために基礎が作られるようになった。つまり「建物で最も重要なのは屋根である」と言うものでした。

 振り返って現在の住宅市場を考えた場合、最終ユーザーである一般のお施主様に屋根の重要性はほとんど認識されていないと感じています。住んでいる家の屋根材が何かを尋ねてもほとんどの方は屋根材に関しての認識がありませんし、仮に的確に答えられる方がいらっしゃってもハウスメーカーや工務店が薦めた屋根材だから選んだとの答えが大半で、ご自身が主体的に屋根材を選んだという状況は皆無に等しく、業界内の人間として寂しいことこの上ありません。


「瓦は重くて地震に弱いとのイメージ」と、屋根に一番必要な性能とは?

 阪神大震災以来の「瓦屋根は地震に弱い」とのイメージにより、瓦業界はまだ完全に復活してはいません。それどころか毎回の大地震でマスコミより流れる倒壊した在来住宅の映像により、傷はますます深まっています。
 業界内にいる人間ならば、倒壊家屋のほとんどが昭和56年以前の旧耐震基準によって建てられたものだと明確に説明できるのですが、それは一般のお施主様の常識となるところまで浸透しておらず「瓦は重いから使いたくない」などの声は未だ多く耳に入ってきます。

 

 振り返って考えますに、「屋根材の重さ」と言うのは屋根にとって最重要な重要な性能項目なのでしょうか?
 屋根に求められる要求性能に順位を付けるとするならば、あくまでも最重要な性能項目は「家本体と中に住まいする人間を、気候変化や様々な気象から守る」と言うことで、「屋根の重さ」などというものは若干の構造的な配慮によって対応できるもので屋根材としてはそれほど上位に位置する性能項目ではない様に思います。

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 山形県酒田市-山居倉庫
(今も使っている庄内米の米倉庫:厳しい気象から米を守ってきました)


建物の三大要素「基礎(地盤)」+「構造」+「屋根」

 ここ十数年の建物の傾向として基礎や構造は大きく様相が変わってきました。一般のお施主様からすれば専門的で解らなかったはずの「基礎」や「構造」に注目が集まり、昔では考えられなかったレベルの工事が通常行われるようになりました。
 これらの分野も本来は地味な職域で、住宅設備や内装に一番の関心がある状況ではともすると全体予算の関係でより簡便な工事、よりコストのかからない工事が横行していたにも関わらず、お施主様の関心そちらを向くことにより、業界が大きく変わったと聞いています。

 ある方の弁を借りると、建物で最も大切な「基礎(地盤)と構造を数十年単位で守るものが屋根」であり、建物の三大要素=「基礎(地盤)」「構造」「屋根」とすら言うことが出来る。そして、一般の方達にそれを伝える事こそが本質的な屋根業界の経営安定への道で、基礎と構造についての高い関心をベースに「それらを守るのが屋根だ」との認識を普及出来る時勢が到来しつつあるのではないのか?と仰っていました。
 業界の中にいるものとして、この言葉を重く受け止めなければならないように思います。


外装材としての意匠性「和モダン?」「景観保護」

 業界内で和瓦の復権という話になると必ず出てくるのが「甍の美しさ」なのですが、残念ながら屋根の意匠性についてお施主様の関心はかなり低いように感じています。お施主様の関心の大半は内装や間取り・設備機器であり、希望する設備機器を入れるために屋根のグレードを落とすことすら普通に行われている有様です。

 

 最近「和モダン」なる言葉がもてはやされていますが、住宅雑誌などで見る限りお施主様の意識はあくまでも住むことになる自分の目の届く「家の内部」に限定されており、外装についてはせいぜい「和モダン」と言う言葉に違和感を持たない程度であれば良く、どうしても和瓦を葺きたいというモチベーションにつながるような雰囲気は、ほとんど感じられません。

 また景観保護という観点での取り組みも随所で見ることが出来ますが、休日訪れる場所に街並みとしての落ち着きを求めますが、自ら住まいする家にまでそれを広げてそれなりの意匠性を持った建物を建てようとするところまで広げていくのはそう容易いことではないように感じています。
 



「代表的な和瓦建築=入母屋」でよいのか?

 恐らく一般のお施主様の脳裏に刻まれている和瓦は、社寺仏閣や旧家で葺かれている入母屋屋根の印象が強く、瓦というと「古くさい」という印象を持たれている方の方が多い様に思います。和瓦でも現代的な感覚を持たれた建築家にかかると、新鮮で素晴らしい装いの建物に仕上がって場合があり、和瓦を「古くさい」と考えられている若いお施主様などに是非見せてみたいものです。

 外装という観点では、私たち業界人が素晴らしいと感じるものよりも、若い一般のお施主様に「これって和瓦なのですか?」との驚きや「何らかの発見」を感じていただくことの出来る施工写真を集め、出来るだけ多くの方達の目に触れさせる活動でないと、なかなか普及には結びついていかないのではないでしょうか?


和瓦の特徴「装いの多様性」

 先日、面白い体験をしました。切り妻屋根で「風切り丸」の施工写真を一般のお施主様に見せたところすこぶる興味を持たれ、実際の施工に結びつきました。 また、弊社で一昨年から出荷を始めた陶器瓦の切落桟瓦を新しい意匠との認識で、面白いと積極的に使っていただけるようになった工務店があります。 棟や袖の施工などを、部分としての施工写真を数種類見せることによって付加価値の提示をしようと取り組んでいらっしゃる屋根工事店もいらっしゃると耳にしています。

 

 和瓦の持っている特徴の一つは「装いの多様性」で、使用する役瓦の種類や施工によって様々な意匠を容易に演出できることです。昨今、施工単価のみが注目されている傾向がありますが、組織的に和瓦のみが持っているこの優れた多様性を一般のお施主様に提示できれば、「単価だけではない和瓦」の世界を広げてゆくことが出来るのではないかと考えています。

 
 風切り丸の施工例(役瓦の種類や施工で様々な装いの可能な和瓦)


 

屋根「この大切なもの」

 屋根材に何を採用するかについての決定権はもちろんお施主様にあります。しかし屋根の価値についての十分な認識がない現在、お施主様は住宅会社が提示した幾つかのサンプルの中からのみ選んでいるというのが実態でしょう。
 大手住宅会社と言えども、お施主様が要求するのであれば自社の建物を売るためには選択肢として必ず用意しますし、良いものだという一般認識があればそれに応じた価格の設定が可能になります。
 何より優先して業界として取り組まねばならないのは「屋根は選ぶものだ」との共通認識の普及で、それが出来れば設備機器や内装のグレードを上げるために屋根の予算が削減されることを防ぐことが出来ますし、必然的に屋根に関わる予算の確保につながってゆきます。

 

 基礎や構造が脚光を浴びつつある今ならば、「それらを気象変化から守る屋根」「屋根として本来求められている性能」についての認識を広めうる機運が到来しつつあるのではないでしょうか?
その共通認識の上に立って粘土瓦を初めとする種々の屋根材がお互いの優れた特徴を主張しあい、「屋根材をお施主様が選ぶ時代=屋根材の高付加価値化」へと繋げていくことが出来なければ屋根業界の明日はなくなってしまいます。

 当然和瓦も、その闘いを勝ち残ることが出来るだけの武器を幾つも持っていると信じています。

 


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「関連記事」

    瓦研究会(和瓦の振興·全陶連:全国陶器瓦工業組合連合会)
    http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-10-29

    屋根材を選ぶのは、軽さではなく、30年以上家を持たせられるかどうか!!で....。
    
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-06-18

    夏涼しく、冬温かい「瓦屋根」(屋根材による夏季・冬期の熱環境
    
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-06-20

    「瓦屋根は地震に弱い」は、正しくない!?(阪神大震災)
    http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-03-13


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読み応えアリですね。さすが、書きなれている感があります。
松葉ガニのウチコの効果でしょうか・・・・。
瓦屋根の写真に愛情を感じますよ。
by (2007-12-13 11:27) 

たいせい

 STEALTHさん、出張前に下書きで書いておいた記事の出張先の山形県でのUPでした。(ちなみに今は仙台のホテル)
 鉛筆を舐め舐め(キーボードですが)締め切りに追われつつ勢いで書いた記事を評価くださり、本当にありがとうございます。
 わたし的には「松葉ガニのウチコ効果」というよりも、我が愛する娘の「とーちゃん、がんばってー♪」効果で、市況の低迷があろうとも本当に大きな元気を貰っています。
 やはり、人生の根幹は「家族」ですね。

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-12-13 23:56) 

アキラ

業界紙に寄稿される・・・文章に力がある、たいせいさんに合ってますね。
考えてみたら、なるほど屋根は最初から存在したのでしょうね。

日本の気候の特徴は、「雨が多い」ということです。
新しい材料(野地板を含む)による、屋根施工は、一体何年間、日本の多雨から家を守れるのでしょうか?
瓦は80年経っても100年経っても大丈夫ですが、例えばカラーベストは10年で野地板まで腐ってしまいます。
15年経つと、もう限界が来て、カラーベストは暴れています。
雨や湿気に弱い木造の家が圧倒的に多い訳ですから、業界一丸となられて、瓦のキャンペーンをなさったら、一般人の意識も変わるかも知れません。
地味な努力も大切でしょうが、「一気にテレビで、大々的なキャンペーンを張る」ことの方が、現在では効果的だと思います。
by アキラ (2007-12-14 10:44) 

mike

さすがです。

と言いたいところですが、
それ以上に私自身の認識の軽さに、
反省しきりです。

建築設計の仕事をしているのにもかかわらず…

改めて、考える機会をありがとうございました。
by mike (2007-12-14 12:23) 

plusgate

屋根で雨を凌ぐ。
家の原点だと思います。
改めて和瓦の存在を再認識させて頂きました。
by plusgate (2007-12-14 20:26) 

さすが、専門家ですね。
この文章で、どこを削るのか、編集も苦悩ですよね。全部必要ですもん。

ところで教えてください。
屋根の先の方が反っている様式をなんと言えばいいのでしょう?
アジア圏以外の人には、そういう様式の瓦屋根が魅力みたいです。
いっぱい写真撮っていました(豊橋、豊川の住宅地で・・・)。
by (2007-12-16 00:34) 

たいせい

 アキラさん、ようやく東北出張から帰ってきて遅い御返事で申し訳ありません。
 屋根材にかかわらず建物について思うのは、湿気の少ないアメリカ西海岸や風の吹かない欧州の建物を日本にそのまま持ってきても、日本の気候風土の中で本当に大丈夫かどうかが解るのは、数十年経ってからではないか?ということです。
 屋根材については仰るように新生屋根材の材自体の劣化、そして薄い屋根材の場合は結露による野地板の腐朽、プレスセメント関連の屋根材はやはり材自体の劣化など、そのまま持ってきたのでは使い物にならないと言うことが実証されてきたように思います。
 構法や他の新建材についても同様で、様々な問題点が起こりそれを少しずつ改良を加えて現在にいたっている訳ですが、改良方法が正しく所定の性能が発揮できるかどうかは更に数十年の年月が経たないと解らないと言うのが正直なところではないかと考えています。

 弊社のお客様の中にお施主様から「瓦は重くて地震に弱いでしょ?」と聞かれると、「瓦が乗らないような建物は家ではありません!」と速答される方がいらっしゃいます。
 ほとんどのお施主様はその一言で納得されて、以後二度とその話題にはならないそうです。
 関係者が自信を持ってお施主様に伝えることの大切さを思うエピソードです。

 nice! &コメント、ありがとうございました!

PS.
 一時、瓦一枚当たり○円という組合費を徴収して植木等を使ったTVコマーシャルを中心にしたキャンペーンを張っていた時期があり、今一度それをやるべきではないかという議論も出てはいますが、価格転嫁の難しいこの時期にキャンペーンを張るだけの原資の捻出がネックで、「議論がある」というレベルで足踏みをしています。
 私個人としては、現状認識についてのコンセンサスの形成がまず最優先で、「誰に」「何を伝えるか」をきちんと議論した上(イメージ広告ならばどのイメージを誰に伝えるか)でないと、総花型で予算だけを莫大に消費するだけのキャンペーンになってしまうのではないか?との思いが強く、漠然としたTVを使ったキャンペーンについては賛否相半ばする思いでいます。
by たいせい (2007-12-17 09:02) 

たいせい

 mikeさん、ご自身のBLOGにまでご紹介下さり本当にありがとうございます。
 ここの所考えているのは、先人達が幾多の努力を重ね定着させてきた「屋根材で最も優れたものは瓦」という共通認識を、私を初めとする今の業界人は当たり前のことと考え、何の努力も払わずに使い捨てつつあるのではないのか?と言うことです。
 メーカーはメーカー間の競争に明け暮れ、屋根工事店は施工価格の競争に明け暮れ、仲間内の過当競争に夢中でお施主様に対する情報発信を忘れてしまい、先人の努力を台無しにしつつあります。

 新生屋根材といえど、まだ今の段階は「瓦なみの性能を実現できるようになった」(耐久性など瓦なみの性能が本当に確保できているかどうか解るのは30年後だと考えていますが)と言っているに過ぎませんので、まだ間に合うと信じていますが、結局は私たちのような瓦業界で今食っているものが「先人と同じ努力」を払うことが出来るかどうかに掛かっているような気がしてなりません。

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-12-17 09:17) 

たいせい

 plusgateさん、実はこの記事の依頼文には「平板瓦や新生屋根材に配慮しつつ」との一言が添えられていて、書くときには随分頭をひねりました。
 本当は、新生屋根材と粘土瓦の以外や、平板瓦と和瓦の比較などを事例を挙げて書いていきたいとの思いも持っていたのですが、業界紙の出版社が和瓦のみ成らずそれらの屋根材も扱っていますので、残念ながら断念しました。(書いていたらもっと文字数が必要でしたので、結果オーライだったかもしれません)
 そちらの方は、近いうちにこのBLOGを使って書いていこうと思います。

 拙い記事をご評価下さり、恐縮いたしております。
 naice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-12-17 09:40) 

たいせい

 ぺんたごんさん、私の勉強不足なのかもしれませんが「隅棟の反り」に特に様式としての名前はついていないように思います。
 元々瓦屋根の施工は地域によってそれぞれの独自性があり、職人や地域のお施主様の美的感覚やこだわり・気候風土などによって様々な意匠があり、独自性があります。(お寺などは、腕に自信のある職人が腕によりを掛けてやりますので同じ屋根の形でも、様々な特徴が見られる場合があります。)
 「反り」とは反対に、中のふくらんだ「むくり」で納められた屋根なんかも古民家などでは時々あります。
 遠くにお出かけの際には、屋根に関心を持っていただくと地域ごとの面白い納め方を発見できるのではないでしょうか?

 nice! &コメントありがとうございます!
by たいせい (2007-12-17 10:24) 

こう

瓦屋根は暑さ、寒さもしのぐためにあると思います。

実家の瓦が薄いことを発見しました。夏の屋根裏が以上に暑いのは、構造や断熱が原因でもありますが、瓦の薄さも原因だと思います。
素人が見ても薄すぎだと思いました。
by こう (2007-12-17 12:51) 

tsk

施主側から
現在、私は建築しようとしているところですが、瓦屋根にしませんでした。
予算の関係上というのはあるのですが、それ以上に瓦の重要性を理解できていないかもしれません。
国産の木材など、文献やネット上での情報も多く、実際に復権しつつあるように思われます。
基礎、構造、そして屋根が基本だということを理解できますが、いわゆる一般的な住宅本では、屋根のことをちゃんと書いているものはほとんど無いです。(すみません自分の読んだ本を見渡した限り)

実際に瓦を扱っている方々があたりまえなんとなくわかっていることを、定量化してあらわしてほしいです。
また、実際に体感できる方法や機会を作ってほしいですね。

今、瓦屋根で無い家が建ち、瓦を知らずに育ってきているので、実際に瓦のよさは、どんどん、わかってもらえなくなっていくでしょう。アパート、マンションに育てば、もっと、わからないかも
瓦屋根のうちで育った私も、その違いに、いまだよくわかっていません。
メンテナンスなんてほとんどしたとこないぐらいですかねぇ。
by tsk (2007-12-18 04:08) 

たいせい

 こうさん、瓦屋根を見慣れた目で新生屋根材で葺かれた屋根を見ると本当に薄く、頼りなげに見えてしまいます。(これも瓦業界病なのかも...。)
 特に断熱性のあまり配慮されていない時期の家だと、屋根材の厚さは室内環境に直接影響してきます。
 「関連記事」でも紹介させていただきましたが、サーモグラフの画像などを見ると家の中に伝わる熱の多くは直射日光に晒される屋根より輻射熱の形で入ってくる場合が非常にい多いようです。
(今年北海道で薄い屋根材による小屋裏温度の上昇を火災報知器が関知するケースが多発し新聞記事にもなったようです)
 当然薄い屋根材だと、外気の温度が直接野地板に伝わり結露などによる野地板腐朽の原因となりますし、音を伝えやすく雨音が室内に響く元でもあり、表面の彩色用の塗料の経年変化で5年程度での塗り替えが必要など様々な問題もあると認識しています。
 もっと皆さんに、瓦の良さを知っていただきたいです。

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-12-18 09:30) 

たいせい

 tskさん、仰るとおりだと思います。
 先人が築き上げてきた「瓦の良さ」についての一般の方達を含む共通認識を、業界内のみに目を向けた過当競争に明け暮れたあげく壊してしまいつつあるのが近頃の状況の根本要因だと思われて仕方ありません。
 結果として一般の目に触れる本などを使った情報発信も業界としてはほとんど行っておらず、様々な印刷物を作ってはいるものの業界内の自己満足的なものが多く、広く優れた特徴を周知するという意味合いではほとんど機能していなかったように感じています。

 率直に言って「瓦の良さは、既に浸透していて誰もが解っていること」だと、業界内の人間が自信を持ちすぎていたように思います。
 瓦屋根の家で育った方が新生屋根材の家に住んで、家の暑さや雨音のうるささに気づくと言う例を業界内では良く見聞きしますが、初めから瓦屋根の家に住んでいない方には、こちらから情報発信していかなければ「瓦屋根の良さ」など誰にも解ってはいただけないと言うことがgひょうかいの常識とはなっていませんでした。

 ネット上でも、よくよく検索すると幾つかの情報が存在してはいますが、作り手の理屈での情報が多く、読み手が読みたくなるような作り方や解りやすい書き方、或いはきちんと納得していただけるだけの情報になっているか?というと正直悲しい現状があり、実はこのBLOGで瓦関係の専門的な記事を多く取りあげるようになった切っ掛けは、この現状を憂いたことによるものが大きいです。

 「情報発信のあり方」「解りやすく定量化した情報提示」「実際にそれを体感できる場所」など、非常に多くの示唆をいただきました。
 私自身微力でどこまでのことが出来るか?まだよく解りませんが、最大産地(国内シェア60%)のメーカーの一人ではありますので、是非今後に生かしてゆきたいと思います。

 コメント、ありがとうございました!

PS.
 メンテナンスにつきましては、ほとんどメンテナンスフリーで過ごせるというのが瓦屋根の大きな特徴だと考えています。(だからこそ逆に瓦屋根の良さを感じずに過ごすことが出来るわけですが...。)
 新生屋根材の大半は、表面の彩色用塗料の劣化で5年に一度程度の塗り替えが必要で(塗料には材の保護の意味もあり行わないと材自体が劣化します)、メンテナンス費用も含めて考えると2回の塗り替え(10年程度)で瓦屋根の方がコスト的にも有利になります。

 詳しくは、以下のようなHPがあります。

三州瓦・全国かわら相談室【愛知県陶器瓦工業組合】
http://www.kawaraso.jp/index.html

瓦Web-三州瓦・愛知県陶器瓦工業組合-
http://www.kawara.gr.jp/index.cgi
 
by たいせい (2007-12-18 11:04) 

toyo

的外れな意見かもしれませんが・・私達のような田舎でも大手ハウスメーカーで家を建てる人が増えているようです。あるいはブログでもときどき感じるのですが、家を建てる際にインターネットで情報を収集している方を多く見かけるような気がします。私などは、そんなこと直接大工さんに聞けばいいのに、なんて思ってしまうのです。現代はそれだけ「人間関係が希薄」になっていて「直接聞く」よりインターネットのほうが情報が集めやすいからなんでしょうか?でもインターネットで集められる情報は玉石混交だと思います。インターネットで質の悪い情報をホンモノと信じこんでいる人が多いように思います。(私の例でいえば無農薬シロアリ防除で「ヒバ精油を使用するから安心だ」と業者から言われてそれを信じ込んでしまう人が多いように。ちなみ私の経験ではヒバ精油はシロアリに対して無力なのですが・・・)てなこと言っても時代の流れで仕方ないんでしょうか?ホンモノの情報はやっぱり「直接、職人さんに聞く」に限るのですがね。とりとめのないことを書いてしまいました。
by toyo (2007-12-19 17:09) 

たいせい

 toyo さん、人間関係が希薄になったと同時に、どこの部落にもいた大工・左官・屋根屋などの建築関係のプロが近くにいなくなって、顔見知りの中で相談できなくなってしまったことも影響しているように思います。
 顔見知りでないと一旦相談してしまうと、断りにくいみたいですね。
 ハウスメーカーなどは、最終的に断ったとしてもそれほど気兼ねしなくて良く、それが逆に話しかけやすい雰囲気となっているのかもしれません。

 時代が変わって、情報の入手先や受注構造などが変わってしまったのは事実なので、メーカーとしては否が応でも今に対応した情報発信やお施主様の囲い込みをしてゆかなくてはなりません。
 その意味もあってこの記事は書いたのですが、もう手遅れでないことを祈っています。

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-12-20 10:28) 

夢空

言われてみて納得です、屋根しかなかったのですね。
そういうこと、言われないとわからない。。
教えてもらって気づくこと多々あります。

勉強になりました<(_ _)>
by 夢空 (2008-06-09 15:39) 

たいせい

 夢空さん、「竪穴式住居には屋根しかなかった」という言葉は、建築設計をやっていらっしゃるどなたかのBLOG(誰かは良く思い出せません)に書かれていた言葉で、私もそんな観点で考えたことがなかったので衝撃的な一言として頭に深く突き刺さりました。
 違う角度から物を考える切っ掛けをいただいたりできるのは、沢山の方達がいらっしゃるネットの良いところだと思った次第です。

 nice! &コメント、ありがとうございます!
by たいせい (2008-06-10 10:41) 

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