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自民党国土交通部会の国土交通大臣への申し入れ(建築基準法改正後の確認申請の大混乱) [平成19年建築基準法改正]

 10月4日に自民党国土交通部会として冬芝国土交通大臣に対し、確認制度の見直しを含めた改善策を検討するよう求めたようです。


改正建築基準法:自民党の国土交通部会、国交相に申し入れ(毎日新聞)
 耐震データ偽造事件を受けた建築基準法の厳格化の影響で新設住宅着工戸数が大幅に落ち込んでいる問題で、自民党の国土交通部会は4日、事態の早急な改善を求め、冬柴鉄三国土交通相に申し入れ書を提出した。

 改正建築基準法の審査基準の解釈が自治体や確認検査機関、建築士などの間で解釈が分かれていたり、細かな変更でも審査をやり直すため審査料が増え、手続きが必要以上に滞るなど、問題点が指摘されている。このため、関係者間の情報共有や習熟者による研修会、申請手数料や計画変更の取り扱いを現場の実情に沿った対応に改めるよう求めた。

 これに対し、冬柴国交相は対応の円滑化を図る考えを示したが、「審査が緩やかだったために耐震偽装事件は起きたのであり、(改正で)責任を明確にした」と述べ、改正法の条件緩和には難色を示した。【辻本貴洋】

改正建築基準法:自民党の国土交通部会、国交相に申し入れ - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071005k0000m010101000c.html

(文末に、自民党国土交通部会の申し入れ書、大臣会見の内容、次官会見の内容などへのリンクを貼っておきますので、時間があったら読んでください)

 


 

 大臣並びに次官のコメントが聞こえるようになったのはこの事態が表面化し、関心を集めるようになった現れでありやや前進とは言えるのですが、審査が緩やかだったために耐震偽装事件は起きたのであり、(改正で)責任を明確にしたと言う冬柴大臣の認識については、このBLOGでも再三指摘しているように大きな間違いと言わざるを得ません。

 

 何度でも書きますが、姉歯事件の本質安い物には安いだけの価値しかない!というあたりまえの一般認識がなかったことにより発生した事件で、確信犯で法の編み目をくぐる抜ける業者に対しては、どれだけ厳格な評価基準を定めようとも「さらなる対策」を編み出すだけのことで、何の効力も発揮しません

 例えて言えば、政治資金規正法幾度にも渡る法改正で厳格化が進んでいますが、それぞれの段階で完全だと思われたシステムでも必ず対策が生み出され「ザル法」と化してしまいます。


 また、いわゆる姉歯事件「確信犯による偽装を誰もチェックできなかった」ことによって起こったとの考え方に基づき今回の建築基準法改正が行われたとのことですが、改正後であっても確信犯で行われる偽装を見抜くことが本当に可能なのでしょうか?

 私が複数から聞いている話では、今回の法改正でも確信犯で脱法行為を行おうとすれば可能で、何のための改正かよく解らないというものです。


首相交代と建築基準法改正後の混乱解消(公明党の素人大臣は勘弁して!)
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-09-18

 

 いわゆる姉歯物件も、建築の実務に携わったプロが図面を見れば一目瞭然だったそうです。

 現に、姉歯物件の施工を請け負った木村建設の施工下請をしたことのある友人の話によると、鉄筋の少なさ・柱の細さなど一目瞭然で、以後オファーがあっても木村建設の仕事は請け負わないことにしたとのことです。

 つまり、建築のプロではない図面も読めない素人が建築確認を机の上だけで行ったことによって偽装を見抜けなかったのであって、いくら厳密なシステムを作り上げようとも、申請書類を見る人間がプロでない限り、図面が増えるだけでほとんど実効性は期待できないのではないでしょうか?

(そういう点で考えれば、確認申請の厳格化よりも施工に関わった業者全ての連座制による相互牽制の方が遙かに実効性があったかもしれません。)


 真に大切なのは信頼性=付加価値だとの一般認識を高めることで、それが今国会で福田首相の所信表明演説にもあった「200年住宅にもつながっていく世界だと思われてなりません。

 このままでは、建築基準法の基準ギリギリの性能しか持たないローコスト住宅がまかり通る、厳しい建築確認も通ったから、こんな安い家でも大丈夫!などという訳のわからない世界になってしまう予感を感じています。

 

(過去記事)
福田首相所信表明演説。建築基準法改正問題·高耐久住宅に言及(建築確認の滞り・200年住宅)
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-10-03
(私の基本的な考えをまとめてあります)

建築基準法改正と瓦の出荷減。関係有りや?無しや?(戸建て住宅着工減:平成19年6月20日改正建築基準法)
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-08-28

 

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PS.
 自民党国土交通部会の要望書を読みましたが、当面の建築確認窓口の混乱への対策に終始していて、その後の建築行政にまで考えが及んでいないように感じられてとても残念です。
 特に福田首相が所信で述べられていた「200年住宅」との兼ね合いを、もっと考えて欲しいです。

PS2.
 netで見たり、報道で聞いたりする話は設計レベルの話ばかりで、施工者の話が全く上がってきていないと感じています。

 地場の大工・工務店への影響についての記事を、近日中に書こうと思っています。(たいした記事は書けないかもしれません)

 このシリーズの記事は、瓦という一建材メーカーの者が書くには些か手に余るテーマなのですが、ここまで入れ込んでしまったので今暫く書こうと思っています。


(資料)
冬芝国土交通大臣会見概要(H19.10.5) 国土交通省HP
http://www.mlit.go.jp/kaiken/kaiken07/kaiken.html

峰久事務次官会見要旨(H19.10.4) 国土交通省HP
http://www.mlit.go.jp/jikankaiken/jikankaiken07/jikankaiken.html

衆議院議員 衛藤征士郎 トピックスニュース
http://www.seishiro.jp/topics/20071005/topics5.html
(自民党よりの申し入れ書はこちらにあります:ここからのリンク先の申し入れ書などかなり重いので注意してください。)

 

参考に
社団法人日本建築士事務所連合会の国土交通省に対する要望書(H19.10.2)

http://www.njr.or.jp/m01/07/071003/071002kijyunho-yobo_.pdf

【国土交通省からの回答】 
(社) 日本建築士事務所協会連合会からの「建築基準法施行の円滑な運用に関する要望」に対する回答
http://www.njr.or.jp/m01/07/071003/071002kaito.pdf

社団法人 日本建築士事務所協会連合会
http://www.njr.or.jp/


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plusgate

>このままでは、建築基準法の基準ギリギリの性能しか持たないローコスト住宅が、「厳しい建築確認も通ったから、こんな安い家でも大丈夫!」などという訳のわからない世界になってしまう予感を感じています。

同意見です。来年の12月にはさらなる改正が行われますが、
結局、同じことを繰り返しています。もっと「200年住宅」を造るための改正
であってほしいと思います。
by plusgate (2007-10-10 16:22) 

たいせい

 plusgate さん、今回の建築確認の滞りによる事態は、何とかこれで表面化したので鎮静化に向かうだろうと思っています。(沈静化してくれないと困ります!?)
 今回の改正は、建築業界へのインパクトはかなりのものでしたが、せっかく建築行政全般に関する問題点も見えてきたように思いますので、おっしゃるように来年12月の法改正を「200年住宅」に向けたものとなるような情報発信をして行ければと考えています。
(瓦という一建材メーカの手には余るテーマなのですが....。)
 本当にこのままでは、建築確認というお墨付きを得たローコストハウスメーカーの一人勝ちになってしまいそうで、地道にやっている「こだわり住宅」の担い手が抹殺されてしまいます....。

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-10-10 16:45) 

今の仕事に転職するまではゼネコンに9年いました。そのときから感じていましたが、国土交通大臣は技術畑の人でないと駄目だと思いますね。
by (2007-10-10 18:24) 

kappa

建築基準法ぎりぎりの家か、そうでないかを施主に提示する必要があります。施主の立場からすると、どうしても目に見えるもので比較してしまいますから。
by kappa (2007-10-11 02:33) 

たいせい

 STEALTH さん、実は組閣後の閣僚会見で冬芝大臣がこの件についてどんな発言をするのか?興味を持って、出張中の山形県酒田市でNHK録画放送を深夜に見ていました。
 し・しかし、残念ながらこの件には一切触れず、大臣がこの件を重要な問題と認識していなかったことが解り、心底ショックを受けてしばし呆然としてしまいました。
(国土交通行政についてまるで他人事のように話されている印象で、現場の長としての改憲とは私には思われませんでした。)
 私の勘ぐりすぎなのかもわかりませんが、姉歯=創価学会員との説が一時流れたこともあり、その辺りが影響している可能性なども考えてしまっています。
 また、現在の政局の中で公明党に対する与野党の綱引きなどもあって、公明党出身の大臣に対する追求がしにくい状況になっているのかもしれません。(民主党がつつかないのは、これが原因になっていると思われて仕方ないのですが....。)

 いずれにしても、官僚が考え出す「国土交通行政」と実際の「現場」を繋ぎ調整するのは政治家でなくてはならないはずで、それが出来ない政治家では、次回の選挙で何らかの結果となって現れるものだと考えています。

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-10-11 09:24) 

たいせい

 kappa さん、仰るように「信頼性=付加価値」を一般のお施主様の目に見えるようにしなければ成らず、それこそが200年住宅への道だと思います。

 前々回の建築基準法改正の際に、「10年間の瑕疵担保責任」と「性能表示制度」が出来、「性能による差別化」の時代を構築しようとの意志が感じられたわけですが、今回の建築基準法改正でもあまりこれに触れられることはなく、いつの間にか下火になって行く予感を感じています。
 このときの考えの上に乗って、姉歯事件の再発防止を考えるのであれば、性能表示の内容を耐久性や構造強度なども含めたものに改変して、それらを数値で評価できるように改めて、国民に周知すれば、「安い物には価格なりの価値しかない」「高い物には理由がある」との普通の常識の世界が出来たように思います。

 性能表示を利用するには第三者評価期間の審査が必要ですが、それにかかる経費より今回の確認申請の手数料の値上げの方が大きいのですから、可能性は十分あったと考えています。
 仰るように現行の法制度では、ギリギリの住宅なのか?(脱法行為の可能性のある建物なのか?)、信頼性に十分重きを置いて建てられた建物なのか?、よく解らないように思います。

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-10-11 09:43) 

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