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ニチアス・東洋ゴムの耐火偽装、ゼネコンの手抜き工事の根本要因?(タイムリーな話題ではなく失礼) [平成19年建築基準法改正]

 多少時間が経過してタイムリーな話題ではなくなりつつありますが、一連の耐火偽装ゼネコンの鉄筋不足の発覚について思うことがあり、記事にさせていただきます。

 業界が多少違うので的確なコメントではないかもしれませんが、もし認識が異なっている点などありましたら遠慮無くご指摘下さい。

 

 ニチアス・東洋ゴムの問題は氷山の一角に過ぎないと考えています。

 また、表沙汰になるかどうかは解りませんが、耐火認定だけではなく構造用の金物や鉄筋・鉄骨、認定品のねじや釘に至るまで、本質的には同じ問題を抱えていると思っています。
(ツーバイフォーに使うねじの一本一本まで認定品を使わねばならないことになっています)

 私は本質的な問題は二つあると考えており、一つは大臣認定の民間開放の問題です。

 「民間に出来ることは民間に」との旗印で、様々なものが民間開放されたわけですが、建材メーカーは「より安い認定料金」で「より短い期間」に「より簡単な試験」で認定を得たいという意識を本音では持っています。

 つまり、よりいい加減な試験をするところに認定依頼が集中し、売上や利益が上がると言うことです。

 厳格な試験を行おうと思う試験機関があったとしても、逆に仕事が集まらず経営的な危機を迎えることになり、倒産よりはマシと危険領域に手を染めざるを得なくなり、一つでもそういう機関があると知ると建材メーカーもより原価の安い建材を作り、その機関で認定を通すことによって利益の確保を考えるようになります。
(これだけ原材料が高騰しまっている昨今、利益の確保と言うよりも「従業員の雇用を守るため」にやらざるを得ない場合もありますが、ルール違反に違いはありません。)

 多少話が変わるかもしれませんが、姉歯問題もそれを通した審査機関についても実は同根で、そうした構図の中で耐震偽装物件を量産していったわけです。

 確信犯で法の編み目をくぐろうとの意志を持った業者に対しては、どれだけ法規制監視体制を厳しくしようとも、さらなる対策が編み出されるだけのいたちごっこでは無いでしょうか?

 また、一人の横着な検査担当者の存在だけで簡単に崩せる制度でしかありません。

 

 今回の耐火偽装問題での国土交通省の記者会見だったと思いますが、実に象徴的な一言が頭に残っています。


 それは、まるで自らは関係ないかの如く「関係検査機関をより厳しく指導します」の一言です。

 私は、この一言で「民間開放」「民間で出来ることは民間で」の掛け声は「お役所の責任逃れ」の為の掛け声に過ぎなかったと確信しました。

今回の建築基準法改正も、姉歯事件で監視体制をマスコミにたたかれたお役所が、「これだけやっているから自分の責任ではない」との一言が言いたいだけの責任逃れのために行った改正だと私個人は思っています。:あれだけ叩かれた国土交通省にも多少同情していますが)

 

 

 もう一つの問題は、建物に対する一般消費者の認識の問題です。

 普通の大工や工務店の方々は、プロの立場で確かな建物を建てたいとの本能を持っています。

 つまり、怪しい建材ではなく自分自身が確かだと思える建材を本当は使いたいにも関わらず、「信頼性=付加価値」」との認識のない中では怪しい建材であろうとも大臣認定があるからということで使い、原価を安く納めざるを得ない為に使用しているのが実態だと推測しています。
プロであれば、怪しいかどうかの見当は、ほとんどの場合ついています

 それを妨げているの、「安いものにはそれだけの価値しかない」「信頼性は付加価値だとの、普通の買い物であれば当たり前に持っている認識が建築物の世界では適用されていないことです

 姉歯事件の際も、安い建物には安いだけの価値しかない」と言うことが問題の本質だというのが建築業界での常識ですし、一般の方達の中でも広さと立地の割りにあまりにも安くてマンションの購入を止めた方も沢山いらっしゃった事実を報道を通して目にしましたが、この認識の周知の方向へは進んできませんでした
(あくまでも「詐欺」という民事事件に過ぎなかったはずです)

 いたずらに消費者保護ばかりを言うのではなく、「買い物には当然リスクがある」「信頼性=付加価値なのだ」という一般常識を広めていく以外に「耐震偽装」「耐火偽装」を防ぐ手だてはなく、その一般常識の上に立たないと、セーフティーネットや罰則の強化や審査機関への指導強化などの対策も、絵に描いた餅になってしまうと感じています。

 また、お役所の責任逃れではなく、真に民間開放を言うのであればプロの責任と自覚を持った建築関係者が確かな建材を使いやすくするために、その方達の生計が立つ道を作ること」であると考えています。

 

 「これだけ厳しい検査を通ったのだから、こんな安い家(建材)でも大丈夫!」とほくそ笑む悪質業者が増えるばかりです。

 

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PS.
 次の記事として、来年末に予定されている「4号特例の廃止」と、こだわり建築の担い手である「大工工務店への打撃」について、書きたいと思っています。

(今回の改正が国会で審議されていた当時は、高層住宅の強度偽装についてしか国会で議論されていなかったはずなのですが、中低層住宅撫でこれほど大きな影響になるのは、絶対変だと思いませんか?)


 

「建築基準法改正関連記事」

建築基準法改正と瓦の出荷減。関係有りや?無しや?(戸建て住宅着工減:平成19年6月20日改正建築基準法)
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-08-28

首相交代と建築基準法改正後の混乱解消(公明党の素人大臣は勘弁して!)
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-09-18

福田首相所信表明演説。建築基準法改正問題·高耐久住宅に言及(建築確認の滞り・200年住宅)
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-10-03

自民党国土交通部会の国土交通大臣への申し入れ(建築基準法改正後の確認申請の大混乱)
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-10-10

建築関連中小企業に対するセーフティーネット(建築基準法改正・確認申請の滞り:金融支援)
http://blog.so-net.ne.jp/kawaraya-taisei/2007-10-11


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アキラ

東洋ゴムの断熱パネルは丁度見積をとっていまして、大変な事になるところでした。
最近内部告発がしやすくなったからでしょうか?
出てくる偽装は、悪質なものが多いように感じます。
人が住む家に使うものに、これはないんじゃない?と思います。
安い物は「安い物」の価値しかないんですから、偽装までやる必要は無いと思いますが・・・
by アキラ (2007-11-14 17:27) 

この手の話は前から細々とありました。当時は噂、酒の席の笑い話の域を出なかったのですが・・・最近はマジなんですよね。
時代の流れとは言え、オドロキです。昔からなんでしょうかねえ・・・
by (2007-11-14 18:16) 

浜松自宅カフェ

ご指摘の通りだと思います。
過去にサイディングの研究開発を担当していた人からだけでも、
同じような事を聞きました。
「アスベストはそれ位便利な材料だった!」とも漏らしていましたね。
by 浜松自宅カフェ (2007-11-14 19:27) 

買い物には当然リスクがある。
消費者も賢くならなくてはダメなんですね。
建築と食物、、偽装がたくさん出てきましたが、
「赤福」にしても、中に居た人からは今出ているようなこと
聞いていましたし^^;。物事を全部「斜」に見ようとは言わないまでも
ちょっと疑問を持つことも消費者として大切なことではないかと思います。
by (2007-11-15 08:53) 

たいせい

 実際問題としてメーカーをやっていると、ギリギリを通すためのノウハウや事例などが話題として聞こえてくることがままあります。
 それを採用するかどうかはそれぞれの考え方に依るのですが、より簡便な方法に流れていくのは人情だと思っています。
 恐らく建築業界での確認申請の通し方なども、これまでも今後もそういったことはあるであろうし、食品衛生法関連でも一般消費財でも同様なことが起こっているはずです。

 結局一般の消費者の方達は、確かな工務店なり大工さんを見つけ出して、その方達のプロの目で見た材料を信用していただくことしか、確かな建物を手に入れる方法はない様に思います。

 鉄筋不足のマンションの件で、ゼネコンやハウスメーカーなど大きな会社だから信用できるわけではないと言うことが明らかになってしまいました。
 お施主様にとっては「確かな工務店成り大工さんをどうやって見つけるか」が非常に大きな課題、私たちの側からは「どうやって自らのこだわりを一般のお施主様に伝えるか?」が本当に大きな課題ですね。

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-11-15 10:05) 

たいせい

 STEALTH さん、本当に「マジ」でそんな話があらゆる業界で横行しています。
 当初は、杓子定規な法の建て前を逃れ、実質を確保し、実態に近づけるための「便法」として行われたことだと理解していますが、今は「実質の確保」が忘れられ「利益確保」の為に行われる傾向が強くなったと感じています。

 建築の世界で言うと、地区の中に大工も屋根屋も左官もいて、知お行き社会の中の人間関係で建築が行われていた頃は、その方達が自分の地域の建物を守っていると言う意識を持っていて(保証書など書かなくとも自分がやった工事に問題があれば無料で直すのが当たり前でした)、絶対に起こらなかった種類の問題だと感じています。

 nice! & コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-11-15 10:17) 

たいせい

 浜松自宅カフェ さん、アスベストについては粘土瓦業界として十数年前からマスコミや官公庁への働きかけをしてきたにも関わらず、表面化したのはほとんどの建材メーカーがアスベストを使わない建材を製品化した数十年後のことでした。(しつこいぐらいに情報発信していたのですが、所詮スポンサー能力の低く対して政治献金も出来ない粘土瓦業界からの発信では、取りあげていただけませんでした。)
 私は、アスベストに関わる諸々の問題は、薬害エイズや薬害肝炎と同根だと思われて仕方ありません。

 nice! &コメント、ありがとうございます!
by たいせい (2007-11-15 10:51) 

たいせい

 夢空 さん、赤福については何が悪いのか?実は私にはよく解っていません。(良くはないことは解りますが。)
 赤福については思っていることがあり、多少理屈っぽい話になってしまいますが、この機会に書いてしまいます。

 食品衛生法は、元々運用面を含めてこういったことを認めてきた法律だったはずで、生産後の賞味期間もそれぞれの会社の自己宣言で行ってきた法律です。
 流通体制が、当初賞味期間を設定した当時に比べて格段に整備されたことも含んで執られていた措置だと私自身は考えており、少なくともこれは法律の運営当局からするとあえて目をつむっていた範疇だったのではないか?と感じています。
 それが、いつの間にかお役所自身の運用基準が何も知らされることが無く厳しくなっていて、スケープゴートのように取りあげられた事件のような気すらしています。
 だから、赤福だけではなくお福餅や他の生菓子も上げられていて、恐らく建て前通りの運用がされていたのでは、無事な会社は一社もなかったのではないのかな...。
(赤福は、食品衛生上の知見なり根拠は恐らく持っていたはずで、だからこそそれが食中毒などにはつながっていないのだと言うのは、私の読み過ぎなのでしょうか?:食中毒など出したら会社が飛びますので、当然根拠を持ったことしかしていないはずです。)
 ただ、本当によく解らないのは、今までこの手の問題は食品の表示に関わるJAS法違反で処理されていたはずのものが、あえて食品衛生法違反で処理されていることに違和感を感じています。
(結局、誰も責任を取りたくないお役所が、建て前で処理した結果なのでは?)

 メーカーは、お役所の法律運用のさじ加減一つで、こんな風に踊らされている側面は建材の世界でも実際に多くあり、いい加減にして欲しいと思うことが多々ありますので、そこから想像した話です。

 理屈っぽい話で’(それも極論ですね)、申し訳ありませんでした。
 nice! &コメント、ありがとうございました!

PS.
 米国などでは、賞味期限切れの食品も店頭に並べられていて(格安になったりはするようですが)、消費者は自己責任でそれを買う文化だそうです。
 また赤福の場合でも、我が家の場合は味が落ちる気がして直営店(おかげ横町)以外では買っていませんし、多くの消費者はそんな意識でいるように感じます。
 「民間に出来ることは民間で」というのは、いたずらに規制を厳しくすることではなく(規制を厳しくすると、行政コストも製品コストも上がります)、無駄な規制を撤廃して上記のような「民間の常識」に委ねることだと考えているのですが...。
by たいせい (2007-11-15 12:09) 

mike

> ゼネコンの鉄筋不足
私は、去年とその前の年と、2件(診療所と病院)続けて自分が設計および工事監理を担当した建物が、そのS建設の施工でした。
(ちなみに、私が当時勤めてた設計事務所は、5人程度の小規模なところです。)

以前から営業的にはダーティーなイメージでしたが、実際、私が監理のときの現場代理人(いわゆる現場監督)は、いづれも優秀でいいひとでした。
それだけに、同じ県内での出来事は残念です。

ところで、そのマンションの監理者(今回は設計者と同じ)のN設計は、施主との監理契約条項に鉄筋については施工者(S建設)による現場での配筋検査の自主報告書をチェックするだけで、監理者自身が現場での配筋検査を実施することは謳われてないそうですね。何の為の監理で、その契約なんでしょう?
自主的には現場も見たそうですが、結果的には発見できなかったんですよね。

また、今回の発注者(ディベロッパー)は、多くの住宅の施主のように、素人ではないはず。本当の施主となる住民の事を考えたら、そんな契約はしないと思うんですが。

直接の原因は鉄筋工でしょうが、それをチェックする元請け(ゼネコン)と、さらにそれを監理という立場(建築のプロの、施主の代理人と言えるでしょう)が存在していて、今回は、その双方の最大手企業でチェック機能が果たせなかった。これは、もう企業の規模でなく、その担当者ごとの、建築技術者以前の人間力くらいしか、防ぐ手立てがないとなってしまいます。実際、私はそう思っています。(自分も含めてですが)

性善説を前提とすれば、その人間力を狂わせるのは、虚栄と拝金というシガラミと思えてなりません。

長々と、的が定まらない記述ですいません。
by mike (2007-11-16 01:05) 

こう

 マンションも戸建も、大手が設けるシステムで、ユーザーの犠牲の上に成り立っているような気がします。
 しかし、悪口を言ってばかりではなく、大事なのは買う側が一番気をつけなければいけないと私も思います。やはり、信頼できる地元の業者を探すことが唯一の方法ですね。
by こう (2007-11-16 12:43) 

たいせい

 mikeさん、あくまでも瓦業界のことしか知りませんので間違った認識なのかもしれませんが、ゼネコンやハウスメーカーなどが行っているISO9000などを使った品質管理体制を私は信じていません。
 大きな組織で、組織全体で同じ品質管理水準を保つのにこれらはよい方法なのかもしれませんが、ともすると「高い品質を守るための品質管理システムであり、その為に必要な書類」であるべきところを、「書類が作るのが目的になってしまい、本来の品質管理を忘れる」という本末転倒な現象が横行しているように感じています。

 結局は、どんな大きな組織であろうとも、個々の現場にプロの職人や現場管理者を配置し、自らの責任に於いて建物を守るという意識がなければ、何の意味も持たないように思っています。
(地方の工務店の良いのは、全ての現場にプロの目が行き届くという点も大きいですね)

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-11-17 10:47) 

たいせい

 こうさん、「大きな会社だから大丈夫なわけではない」と言う点を一般のお施主様達に知らしめたという意味で、今回の事件もそれなりに意味があるように思います。
 ただ恐らく私たちに突きつけられている問題は、一般の方達に対してどの工務店が信頼できて、どの工務店が信頼できないのか?の情報を、どう伝えられるのかと言うことだと感じています。

 ともすると地元の業者でも、施工にこだわりがないにもかかわらず、信頼性が高いイメージを与える「宣伝」が上手くて賑わっている業者も中にはあります。
 何とかこの期に、「大手だから信頼できる」という間違ったイメージだけは壊れて欲しいものですが....。

 nice! &コメント、ありがとうございました!
by たいせい (2007-11-17 10:56) 

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